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図書館日誌

3年選択古典B 追記

 この授業では、図書館としては今年度一番難しい質問を受けました。「在明の別れ」を読みたいと言うのです。

 私は、古典Bの授業で「とりかえばや物語」を参考にしてレポートをまとめました。その際、一緒に使用した作品が、この「在明の別れ」でした。この作品は、インターネットで「とりかえばや物語」の類似作品を調べていた際に見つけたサイトで偶然知りました。(3年Tさん)

 この「在明の別れ」について調べ始めて驚きました。「この作品の存在自体は知られていた。しかし作者不明、奈良県天理に写本が一つあるだけ」という謎の作品でした。現代語訳はなく県立図書館から「鎌倉時代物語集成 第1巻 笠間書院」を取り寄せ、また、この作品を題材にしたフィクション小説を提供しました。

 本庄高校の生徒は、ときに非常に難しい質問をぶつけてきます。それを解決に導くのも本高図書館の重要な役割です。

 

卒業の3年生Nさんから図書館へメッセージ その1

 私のおすすめ本 「ムゲンのi」 知念実希人著 2019 双葉社

 この本は、新感覚のミステリー小説です。何が「新感覚」かというと、この作品には「恐怖のスパイス」が加わっているからです。

 神経内科医の敷名愛衣は長期間昏睡状態に陥った3人の患者を救うべく、マブイグミ<魂の救済>という方法で患者の夢の中に入り込み、失われたマブイ<魂>を取り戻し目覚めさせます。患者想いで、昏睡から救うために一生懸命取り組む彼女。それは、彼女の辛い過去を克服するためでもありました。3人のマブイグミを経て、大きく成長し強く生まれ変わった彼女は、衝撃的で哀しい事実を受け入れることになります。

 予想もしない結末があなたを無幻の世界へ引き込みます。時間を忘れ、一気に上・下を読んでしまいたくなるでしょう。最後まで読んだ時、必ずもう一度読みたくなります。大切なものを再確認したくなる感動のミステリーです。

 昨年、映画になった「仮面病棟」の作者でもある知念実希人ワールドにあなたも是非、誘われてみて下さい。

卒業の3年生Nさんから図書館へメッセージ その2

私のおすすめ本 「'90s〜2010s サンリオのデザイン」「'70s&'80s サンリオのデザイン」 グラフィック社

 あなたは”サンリオ”にどのようなイメージを持っていますか?子ども・女子っぽいイメージでディズニーほど親しみを持っている方が少ないかもしれません。そんな概念を持っていたらそれは古いと思います。サンリオにはたくさんの個性豊かなキャラクターがいます。彼らは老若男女問わず愛されていますが、世間で認知されているキャラは数少ないです。そんな彼らは毎年開催される「サンリオキャラクター大賞」を機に、より人気になるために様々な方法で広報活動をしています。4月から開催されるのでもしよかったらネットから投票できるので、投票をして応援してあげてください。

 サンリオをあまり知らないあなたも、1つくらいはサンリオのグッズを持っているかもしれません。そして、そのあなたのグッズがこの本に掲載されているかもしれません!そんな期待を持ちながらこの本を読んでみてはいかがですか?そして、新しいキャラクターを知り、あなたの”推しキャラ”にしてみてはいかがですか?

卒業の3年生Nさんから図書館へメッセージ その3

 本高の図書館は本当に最高です!

 なぜなら、市立図書館で取り扱ってない図書が数多くあり、図書館になくてもカウンターで頼めば、必ず用意してもらうことができます。また、蔵書量は約4万冊でこんなに数多いのはなかなか珍しいと思います。話題の新作本;小説;児童書;ちょっとマニアックな本;様々な参考書;漫画など、とにかくありとあらゆる図書がここには眠っています。

 スマホから少し離れ本を読んでみてください。どんな本でも知識と想像力があふれています。1冊でも誰かに薦められる本を見つけてみてはいかがでしょうか。きっと、あなたが気に入る本があるはずです。卒業までに一度は訪れてみてください。本好きだけではなく、誰もが魅せられる図書館だと思います。

3年選択古典B その1

 令和2年11月から3年1月にかけて、3年生古典Bの授業が図書館で行われました。その成果として「特選レポート集」を図書館にいただきましたので、ここに紹介します。

 第1回は担当教諭から「巻頭言」です。

 この度、3年生古典の最後の活動として「古典『で』学ぶ 古典からの学びレポート」を実践しました。この活動の目標は、今まで身につけた知識・技能・経験(古典に限らず、国語全般)をフル活用して”大学生に迫る”というものでした。つまり、真の意味での「学問」に至ることが目標でした。単に問題を解いたり、暗記したりするのではなく、自分自身で問いを立て、調査分析し、論理的に思考し検証し、今までに無い新たな学びを想像していく。これが私の信念とする真の意味での「学問」です。

 生徒のみなさんに、無茶な課題をやらせている!という自覚はもちろんありました。しかし、多分できるだろうと思っていました。今までみなさん主体の授業をやってきて鍛えてきたつもりでしたし、何よりみなさんの力は、みなさんが思っている以上にすごいのです。

 本冊子では、みなさんのレポートの中で特に優秀な4つを選びました。テーマの設定、問いの立て方、内容、調査、検証の方法、レポートとしての体裁など、あらゆる点で素晴らしいものがあります。ぜひお読みいただき、楽しみ、学んでください。

注)4つのレポートは下記のリンクからPDFファイルでお読みいただけます。

古典Bレポート.pdf

 

 

3年選択古典B その2

『ギリシャ神話』との比較を通じた『古事記』の考察 扱った作品『古事記』

査読・評価
 『古事記』と『ギリシャ神話』における類似性と相違点を明らかにし、考察を行った大作レポートである。
 双方の共通点が分かりやすくまとめられており、神々の統治場所については表で整理されている。このように、表で整理できるという点からして、すでに両神話は類似しているといえるだろう。後半の考察において、類似点の原因にユーラシア大陸、シルクロードの影響を考えている。当時、日本は文字文化が無い状態で朝鮮半島等に進出し、中国とも交流があった。基本的に、文化は情報量が「多い方」から「少ない方」へと流れゆく。執筆者の考察にあるように、日本に流入したギリシャ神話的説話が、日本古来の感性・価値観から、文字起こしされた『古事記』に活かされたという流れが論理的であるように思える。
 『古事記』そのものに対する考察として、生まれではなく適材適所の神となっているというのも興味深いが、下克上をしない神々という点がなお面白い。レポートにあるように、日本は天皇中心の国家を運営し続けており、政体や権力者が変わっても天皇の扱いは基本的に変わっていない。その一方で、欧州では王権簒奪や侵略による国家の消滅が何度も起きており、それが『ギリシャ神話』や『北欧神話』にも影響を与えているといえるだろう。つまり、平たく言えば日本の神話は「天皇の存在の正当性の主張」であり、欧州の神話は「王権簒奪の正当性の主張」である。
 神話研究史においては、その典拠のあいまいさや、訳によって歪曲しやすい解釈など、様々な困難がつきまとう。ぜひ学術的な考察で、さらに解き明かしてもらいたいところである。

3年選択古典B その3

世阿弥芸論について 扱った作品「風姿花伝」

査読・評価
 まず、レポートの書記様式が非常に優れていることを書いておく。引用などが正確に分かりやすいように組まれており、項目わけがしっかりしている。「大学生」のレポートかくあるべし。
 内容について。『風姿花伝』を基軸に世阿弥の「花」概念について、これを世阿弥が中心課題=能の主題、としていたのではないかという点から考察を深めている。「秘すれば花」の理解について、「戦略」と捉え、図式的に示している。この理解は的確であるといえる。また、最終的に、歴史的観点から能を大衆文化であるという位置づけにしている。それによって、なぜ「花」を観客の側からも意識せねばならなかったかが説明できる。「秘すれば花」の戦略は、役者のどうしのためのものではなく、役者―観客間で意味が生まれる。したがって、世阿弥はもともと「行う文化」(=役者が主体の文化)だった申楽から大成させた能が、もはや「見られる文化」(=役者と観客が平等な立ち位置で向き合う)なのだと意識していたと考えられる。そういう観点からも、執筆者の最終的まとめである、世阿弥が「時と場所、観客の心に応じ、いかなる人たちも楽しませることができねばならないという考えに至った」という分析がいかに論理的かが理解できるというものである。

3年選択古典B その4

禁忌の詞について 扱った作品「十訓抄」

査読・評価
 『十訓抄』における「禁忌の詞」から、禁忌について考察したレポートである。
 まず『十訓抄』の「禁忌の詞」とされる具体的な例が、なぜ禁忌とされるのかを調査し、『俊頼髄脳』にその根拠を見ている。その上で、さらに『俊頼髄脳』では「禁忌」という言葉が出てこないことから、さらに出典を『袋草子』に求めた。そこから、「天皇の御前において和歌に不吉な表現を用いること」が「禁忌」の定義であることが確定される。
 ここまでの考察に出てきた具体例もすべてこの定義に当てはまるため、この考察と調査は非常に論理的かつ徹底的に進められたと評価できる。「禁忌」は現代において西洋的価値観の「タブー」と同じ理解になっており、非常に広義に使われる。少なくとも鎌倉時代までは、「禁忌」が「天皇の御前の和歌の不吉な表現」に限定されていたとすれば、この語句の文学的捉え方に大きな意味をもたらすことになる。一般的古語辞典には載っていないため、極めて重要な研究だといえよう。

3年選択古典B その5

今と昔の”月”の解釈の違い 扱った作品「秀歌撰 ほか」

査読・評価

 『秀歌撰』をはじめ、「月」をテーマに和歌・俳諧・歌詞を通史的に分析したレポートである。

 このレポートで非常に面白いのは、マイナスイメージのみで「月」を詠んだ鎌倉~江戸から、明治時代に中間が置かれ、戦後はプラスイメージに詠まれていくという現象を追ったところである。実は、俳諧(俳句)というものは基本的に風景を詠むものである。一方、和歌は心情を詠む。したがって、江戸以降に「俳諧」において「月」を詠む場合、風景の「寂しさ」は入れても心理的な「悲しさ」までは表現できない。したがって、執筆者を補足するならば江戸から明治にかけて「美しさ」という要素が生じてきたのは、このような芸術体系の差異にも原因を見出せるのではないかと思う。

 なぜ「月」が「儚い」マイナスイメージを連想させたかという考察については、最後の述べられたように月の満ち欠けに根拠を置けるだろう。

 また、現代の価値観で「月」にプラスイメージを見出すのは、月が昔と変わらないためだ、という分析は、一見すると先ほどのマイナスイメージの説明と矛盾するが、実際はそうではない。現代人は、夜に光るものとして、むしろ「蛍光灯」などのモノに儚さを感じるようになった。それは都市化が影響しているだろう。目まぐるしい街の明かりの変化に比べ、月の明かりこそが不変という逆転が生じたといえる。

 時代を通じて一つのテーマで韻文の表現を捉え切ったレポートとして優れている。これに加え、韻文として「詩」も明治~昭和で加えると、さらに文化的理解深まりそうだ。

3年選択古典B その6

 最後に、担当教諭にこの3年間の実践および今回の授業を理解するための「補足」を頼んだところ、快諾していただけました。

 図書館における授業の「一つの実践」として、生徒の成果とともに記録しておきたいと思います。

 

学校図書館におけるレポート授業と3年の通年指導

 今回、3年生の古典Bにおいて最終活動である「古典『で』学ぶ 古典からの学びレポート」を実践しました。古典文学全集の中から、自分で自由に古典作品を選び、十数時間を図書館での調査・レポート執筆活動に充て、大学レベルのレポートを作成するという挑戦的課題でした。
 どの作品を扱うのか、どのようなテーマで考察していくかなどは、生徒個別に対応する必要がありました。そして、レポートを大学レベル、すなわち「単なる調べ学習」ではなく「論点を明確にし根拠を示して考察する」ために、レポートとしての体裁や引用したうえでの考察方法などを指導しました。
 ただし、全員に事細かな指導を必要とはしませんでした。これは、3年間で主体的に思考し議論させる・論述させる力が付いてきたおかげだと思います。全員を3年間指導したわけではありませんが、1年次には世界の諸言語をグループで調べてまとめる活動や、ディベート、2年次には小説読解におけるレポート作成、生徒が質問と解答を担当する活動を行ってきました。この流れの中で「単に調べたことを処理する」から「情報を集め分析し自分で見解を示す」というレベルに引き上げ、最終的に今回の活動で「そこに説得力・証拠性を持たせることで『学問化』する」にまで至りました。優秀な生徒たちの中には、私の手助け一切なしで、本当に高校生が書いたのかと疑うような優れたレポートを書き上げた者もいました。
 このように、特に国語科における言語活動を通じて養われる「総合的思考力」「主体的探究力」のような能力は、一回の単発的活動で終わるべきではなく、当該学年や生徒の能力に応じ、通年で行われるべきものです。生徒の力をステップアップさせるために、授業の方式や目標もステップアップさせるわけです。国語においては、教科書はあくまで「能力を伸ばすための1パーツ」に過ぎないため、クリエイティブな活動を行おうとすれば「新しい」「外部の」テクストに触れる必要があります。学校においては、例えば学校図書館にそのようなクリエイティブな活動の場を見出すことができるのです。

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