日誌

地学部日誌

星 星めぐり①“七夕”

 地学があつかう分野に「天文」があります。
 天文学の始まりは古代メソポタミアの占星術であるとされますが、学校で学ぶ天文学(地学)には当然占星術はありません。でも、古代の人々が星を眺め、観測し、天体の運動を生活のよりどころにしたことは、現在の天文学が生活に深く関わっていることからもうかがえます。
 さて「七夕」です。なんで今ごろ「七夕」?まぁそれはあとで説明するとして「七夕」、どう読みますか?「七・夕」は「た・なばた」「たな・ばた」「たなば・た」どれですか!?さて困りました。いずれにしても「たなばた」と読むのが一般的ですが、実はその読み方は本来の読み方ではなく「当て読み」なのです。「七夕」は「しちせき」と読みます。
 「七夕(しちせき)」はかつて宮廷で行われた節会(せちえ)と呼ばれる五つの宴会(五節句)のひとつでした。「端午の節句(5月5日)」もそのひとつです。中国から輸入された風習ですが、7月7日には同時に裁縫の上達を願って織物(機)と供物を、棚にささげたといわれています。つまり「棚機(たな・はた)」ですね。それによく似た日本古来の棚機津女(たなばたつめ)の伝説と、やはり中国から伝わった織女(しょくじょ:おりひめ星)牽牛(けんぎゅう:ひこ星)の伝説とがミックスされて奈良時代に「たなばた」行事になったといわれています(もちろん諸説あります)。
 で、その「たなばた」をなんで今ごろ?ですが、みなさんご存じのように7月7日って梅雨(つゆ)の真っ最中ですね。ほとんど天の川をおがむことなんてできません。なぜ?なんでそんな時に星を見上げる行事を?そこにもう一つの天文学「暦(こよみ)」が関係します。‥‥これも高校の地学では扱わないのですが(国語の「古文」ではあつかいます。文学的に。)、現在日本をはじめ多くの国で利用している暦はいわゆる太陽暦で「グレゴリオ暦」といいます。この話をくわしく語るとそれだけで一話完結になってしまうので、『私たちが使っている「カレンダー(calendar)」は今から435年前の1582年にローマ法王グレゴリウス13世が決めた』とだけ知っておいていただきます。この暦のことを日本では「新暦」と呼んでいるのですが、では旧暦は?というと、1873年(明治6年)に新暦に変わる(改暦)まで日本で使われていたのが旧暦「天保暦(てんぽうれき)」です。この天保暦はいわゆる「太陰太陽暦」で、1年365日を月の満ち欠けで数えていきます。ところが月の満ち欠けの周期は約29.5日であるため、ひと月ごとに少しずつずれが生じます。そのずれを19年に7回(ハンパだなぁ!)解消するために「閏月(うるうづき)」という一ヶ月を置きます。今年は閏五月がありました。そのために直後に近い旧暦七月七日が、新暦で今年は来週28日月曜日にあたるという、7月7日とはずいぶん離れたところに来てしまいました。‥‥これでやっと本題に戻りました。「たなばた」は地方によってはこの旧暦に行うところもあるので、これから「七夕行事」が行われる地方があるわけです。というわけで、今年の七夕はこれからというところがある、というのが今回のお話のひとつ。
南を向いてから見上げた星空です。こんなふうに見えるはず!もちろん、線や文字はないですよ。

▲「アストロガイド2017」(AstroArts Inc.)を編集

 で、その「たなばた」の舞台である夏の夜空ですが(ここでやっと図をご覧いただきます)、上で述べたように新暦の7月7日は梅雨の真っ最中ですのでおりひめ星(こと座のベガ)とひこ星(わし座のアルタイル)が見られないことが多いのに対して、旧暦七月七日は全国的にほぼ梅雨が明けたあと(2017年:8月28日、2018年8月17日、:2019年:8月7日、2020年:8月25日、…等々)になります。ですからこの伝統的な七夕の日には天の川の両岸におりひめ星とひこ星が見られることが多いのです。それでも天気が崩れて雨が降ることがあり、この雨を「催涙雨(さいるいう)」と呼んでいます。
 さらに、です。二つの星が1年に1度だけ会えるという、その瞬間が夜空で見られるのか!?
 残念ながら「むり~!」2つの星の間の距離は約14.4光年。光の速さで14年以上かかる距離ですし、そもそもこんな距離を星が勝手に行き来することはありません。
 2つの星の出会いはありませんが夏の夜空はとても賑やかです。図は8月28日の午後10:00ごろの星空ですが、天の川が北東(図の左上)ペルセウス座付近の地平から南西(図の右下)射手(いて)座付近の地平にかけて、一年で一番美しく長い弧を描いて横切り、そのはしで月齢6の月と黄色い土星が沈もうとしてます。気象条件が整えば、本庄はもちろんのこと熊谷、深谷、行田地域でも天の川が見えるはず。その両岸で輝く1等星の、明るいほうがおりひめ星、やや暗いほうがひこ星です。南の地平に近いあたりの天の川は銀河系の中心部分で、いわばもっとも星が多く、天の川も濃い部分を見ていることになります。いて座やさそり座はその付近にあります。最近の研究では銀河の中心には「超巨大ブラックホール」が存在していると考えられています。もちろん見えませんが。
 ‥‥さて、天気はどうでしょうか。夏休みの最後の星空を眺めてみてはいかが?夜