近況 全日制

2013年8月の記事一覧

白熱教室入門

 去る7月29日、第3回白熱教室入門編が早稲田大学国際会議場で行われ、本校から6名の生徒が参加しました。
 第1部では、安藤美冬さんによる『働き方に革命を起こそう』と題した講演がありました。安藤さんは大学卒業後ある大手出版社につとめますが、そこで経験した職場環境のタイトさに退職を決意。様々な挫折を乗り越え、特定の仕事場を持たないノマド(フランス語で遊牧民)ワーク、ネットを使っていろんな仕事を並行して請け負うパラレルキャリアで起業に成功しました。1年で3,000人と名刺交換した経験を持ち、今でも一日に1冊の本を読む安藤さんです。誰にでも出来ることではなさそうですが、300名を超える高校生に彼女の生き方はどう映ったでしょうか。
 さて第2部は、『これからの生き方を考える』をテーマに千葉大学法経学部大学院の小林正弥教授の登場です。小林教授は、NHK『ハーバード白熱教室』で著名なマイケル・サンデル教授と親交のある日本の対話型講義の第一人者です。
 本庄高校は2011年の初回から毎年白熱教室入門に参加してきました。多数の参加者がいるなかで挙手をして指名されるのはけっこう難しいのですが、今回は本校生徒6名中4名が自分の意見を発表する幸運に恵まれました。
 対話は『ルールと自由』というテーマで、「校則はどうやって作るべきか」という身近な問題から始まりました。本校生徒の一人は、「今年度制服導入が学校側によって一律に行われたので、生徒にも考えさせるべきだ」との意見を出しましたが、もう一人の本校生徒が「先生がしっかり決めればいい」と反対意見を出しました。こうした意見の相違を対話型講義では大事にします。
 つぎに参加者が高校生議会を構成していると仮定して、『少子化問題』について議論しました。「国が少子化を食い止める方法として、結婚したら子どもを作ることを義務化させる法案を出すことにした。君は賛成か反対か」という問いです。
 まず反対の立場から、「法律で女性に出産を強制させるのは、生めない女性を差別するので反対です」という女子生徒の意見が出ました。義務化を支持する生徒はほとんどいません。そのなかで本校男子生徒が「世界には結婚税を取っている国もある。出産の義務化は子を産むという結婚の目的に責任を持たせる意味で必要だ。女性差別になるという意見があったが、すでにそういう差別意識は別にあるので法律のせいとばかり言えない」と主張しました。この意見には女子生徒から「生みたくない人もいる」と義務化反対の声が相次ぎました。
 続いて移民による少子化対応策が話題になりました。会場から外国人は犯罪を犯す可能性が高いという意見が出ると、前出の本校生徒は、「(労働力として入ってくる)移民は日本社会に受け入れられるように自覚して来るので犯罪を犯すと決めつけるのはよくない」と、移民受け入れ賛成の意見を出しました。小林教授は「彼の意見はいづれも積極的な問題解決策をとろうとする点で同じです」とまとめ、ヒートアップした参加者を冷静にさせ議論の方向を示しました。
 ここであらためて、①「女性の出産の義務化」②「移民の受け入れと女性が出産しやすい社会的環境を作る」と、③「少子化にあわせて社会の有り様を変える」という3案が提示されました。高校生の支持は②と③に集中しました。女性の出産を義務づける法案は否決されたのです。出産の義務化を支持した本校の生徒も議論の流れから②の意見に変更しました。
 最後に小林教授は、「白熱教室の議論で自分の考えが深まったり変わった人はいますか」と問いかけました。すると、ほとんどの生徒が「はい」という意味の「青のボード」を掲げていました。
 自分の意見を発表しあい、共に最善解を探る白熱教室の醍醐味が感じ取れる面白い展開となりました。11月には本庄高校に小林教授を迎えて白熱教室を実施する計画があり、参加した生徒達は今から楽しみだと語り合いながら帰路につきました。